悲しいけど最後まで観てほしい。ミリオンダラーベイビー。
Amazon prime videoで 無料視聴できたので観てみました。
公開当時から話題となっていたクリントイーストウッド主演のヒューマンドラマです。
てっきりボクシングサクセスストーリーかと思っていたのですが、
トレーナーと女性ボクサーの人生から暖かさと悲しさの両方を感じる映画です。
では、僕の感じたことを書きます。
この映画は一言でいえば悲しかったです。
クリントイーストウッド演じるトレーナーのフランクと
ヒラリースワンク演じる女性ボクサーのマギーが
お互いを父娘のように慕っていき、ストーリーは進みます。
たくさん考えることがある映画だと思いますが、僕が気づいたことは3つありました。
- 映像中の陰が印象的
- 女性ボクサーの境遇と地方育ちの自分を照らし合わせて思ったこと
- 手に掛けた大切なものが失われてく悲しさ
1.映像中の陰が印象的
この映画は暗い雰囲気が抜けないです。
ボクシングジムは古く、練習生はやんちゃな若者ばかりで将来有望な選手は
ほとんどいない様子です。
ジム内のシーンは光と陰の対比が強烈です。
光よりも陰を強く感じました。
主要な登場人物の心に陰を落としているような雰囲気でした。
実際に、
フランクは愛する娘と連絡が取れない状況であるし、
マギーは貧しい地域出身でウェイトレスとして働きながらボクシングに打ち込む苦労人であり、
フランクの親友スクラップは失明でボクシングを諦めたが、やりきれない気持ちで指導しています。
マギーが勝利を積み重ねているときは眩しいぐらいの明るさで順調な様子を感じますが、リング外のシーンは陰によって常時暗かったです。
フランクは過去に選手を壊してしまい、マギーに二の舞を食らわせないように試合の予定を組んでいる様子は苦しそうでした。タイトルを手に入れるには強い相手と試合したいが、壊れるリスクが大きくなるジレンマとの間で悩むからです。
フランクは選手が壊れないように、スクラップはチャレンジを第一に考えていたため、2人の想いが行き違うぎこちない空気は陰によって強調されていたかもしれません。
クリントイーストウッドの映画は光と陰の対比は特徴の1つらしいので、それが顕著に表れている作品のようです。
僕はずーっと暗い映画だなあ。。と思いながら観ていました。
2.女性ボクサーの境遇と地方育ちの自分を照らし合わせて思ったこと。
貧しい環境に囲まれると心に余裕がなくなる様子に心が苦しくなりました。
マギーは貧しい育ちで、家族はトレーラー内で生活保護を受けて暮らしています。
常にお金に悩まされる生活からかマギー以外はみんな意地悪な性格です。
マギーは地元から離れた街で働きながら、夢を叶えようと生きています。
僕は世間から貧乏と呼ばれるほどではありませんが、決して裕福ではありませんでした。この心に余裕がない状態の家族を見るのが辛かったです。
お金の話や結婚を押し付ける場面は目を半分覆いながら観ていました。
他人に幸せの形を押し付けるのは苦手です。
貧しい方々はどうしても現金を気にします。家をプレゼントしたマギーに対して、現金でいくらだったのか、現金で欲しかったと心無い言葉を浴びせるのです。
僕の両親もすぐお金の話になりますし、祖母は真っ先に聞くほどです。
お金の管理は必要ですが、プレゼントやお祝いの場面では言わないで欲しかった、、、とモヤモヤしたのを覚えています。
特に心に残っているのは、
マギーの母親は「早く良い男を見つけろ」、「お前は町の笑い者だ」と罵るシーンです。
マギーの地元は舞台となる街よりも1,000㎞以上離れた地方です。
情報や文化が交わりにくく、
偏った考え方が染み付いて、
それが当たり前で正しいというような
地方の悪いところが浮き出てました。
周辺住民とは異なる生き方だけでマギーは変わり者扱いされる状況は心苦しいです。
地方出身の僕には、この映画は貧しい地方の陰を映し出しているように受け取れました。
3.手に掛けた大切なものが失われてく悲しさ。
トレーナーのフランクは最も悲しい登場人物かもしれません。
手に掛けたものが離れていってしまうからです。
そんな悲しい現実に直面している状況から彼の不器用な人柄が伝わってきました。
娘宛の手紙は住所違いで返送されますが、何度も何度も送り続けています。娘が離れた経緯は作中にはなかったですが、本意でない別れは間違いないでしょう。
返ってくるにも関わらず送り続けるのは、愛の強さと頑固な性格を表しています。
頑固さは口答えを許さないルールを決めたところからも感じ取れます。
愛を持って接する人柄はリッキーを8年間じっくり育ててきたことからもわかります。
しかし、リッキーはフランクの元を離れます。怪我をさせまいとタイトル戦の申し出をなかなか受け取らなかったフランクにストレスを抱えていたからです。
残念ながら、愛の強さは過保護に捉えられてました。
マギーをジムへ受け入れた後、フランクはマギーを娘のように扱うようになります。
的確なアドバイスで選手に自信を与える姿は優秀なトレーナーに見えました。
しかし、タイトル戦遠征の際には、交通手段を選ばせました。可愛がって甘えさせてしまったのかもしれません。
マギーの入院後は強引なくらいに付き添う様子が描かれてます。
病室では近すぎず、遠すぎずの距離感で聖書を片手に二人の時間を過ごしていました。
終盤では、娘さながらに愛したマギーの安楽死に関して、助けたい想いとマギーの望みを叶えたい想いとの葛藤に心が痛くなりました。
何故フランクにこんな仕打ちを与えてるんだ!と言ってやりたくなるシーンでした。
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ところで、フランクがコミュニケーションの不器用な父親に見え、自分の父親と似ているなあと、懐かしい気持ちになりました。
子供に掛ける優しい言葉や姿勢がどこか可笑しくて、くすぐったい感じを思い出しました。
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フランクは自分の手を掛けたものが皆離れていってしまう現実から逃げるかのようにジムに姿を現さなくなります。
「自分のルールを守ること」を大事にしていたフランクは、ルールを守れなかったからジムを去ったと考えられます。選手を守ることを第一に考えていた彼としては、マギーの容態を受け止めるのはあまりにも厳しかったです。
自分のルールを守る意志の強さは見習いたいですが、あまりにも厳しすぎる結末に許してあげたくなりました。
僕はこの映画で気づいたというより、思い返すことが多かったです。
スカッとした気分になれるかな、なんて思いは忘れて集中してエンディングまで観てしまいました。
僕はフランクとマギーには報われて欲しいと思ってたので、結末は苦しかったです。
しかし、貧しい環境にも負けず懸命なマギーと愛を持って支える不器用なフランクとを見て、メッセージを感じることのできる映画だと思います。
Amazon prime会員は今なら無料で視聴できるので是非観てほしいです。